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受付日 :2023年8月17日
小中学校の教室内でのミミズコンポスト実施の提案 (カテゴリ:教育・文化/教育)

私たちは高校3年生です。現在児童生徒の食材の好き嫌い・量が多い等の理由で残され、発生した給食残飯は有効活用されずに廃棄されている現状があります。私たちはこの現状に着目し、残飯を有効活用するためのコンポストの利用を提案します。

福岡県が発行している令和4年度教育便覧によると、県内の公立学校の小学生と中学生の人数はそれぞれ274,787人と132,232人、計407,019人であり、平成25年度の環境省のデータ「学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査結果について」によると児童生徒一人当たりの残飯が平均7.1kgであるため、福岡県の公立小中学校では年間約2889tもの残飯が発生していることになります。

この残飯の活用がされていないという課題に対して、私たちはミミズと微生物の分解の働きを利用して生ごみを堆肥に変える、ミミズコンポストの実施が効果的であると考えます。学校でコンポストを実施することは残飯を堆肥し利用することのみならず、下記の授業単元(生活・理科)と関連し、環境問題・生態系への関心を高める効果が期待できます。

関連する授業単元:

小1・2 動植物の飼育と栽培

小3 身の回りの生物と環境とのかかわり

小5 発芽の条件 成長の条件

小6 食べ物による生物の関係

中1 生物の観察

中3 自然界のつり合い

またコンポストの難点は臭いが発生することですが、ミミズコンポストは臭いの支障がないとされており、残飯を直接入れられるように教室にミミズコンポストを設置することが可能となり、授業での利用もしやすくなると考えられます。以上を踏まえ、私たちは学校にて、実際に室内でミミズコンポストを実施できるかを検証しました。

【コンポストの実施】

ミミズコンポストの準備として、エーハイム製の60cm×30cm×36cmのガラス水槽の底に湿度を保つためのおがくずを多く含んだ所沢植木鉢センターの馬糞堆肥を敷き、その上にアースワーム研究会から購入したシマミミズ200gを梱包された土ごと投入しました。

ミミズに残飯を与えるにあたり、量と内容について気を付ける必要がありました。シマミミズは一日に体重の半分を食べるとされており、今回の水槽全体では一日に分解される残飯は約100gです。そのため1日100gを目安に、1日おきに200g与える等の調節をしながら残飯を与えました。この目安を大きく超えた量を与えると、ミミズが残飯を分解し終わる前にハエやダニなど他の分解者の大量発生を引き起こし、教室内で運用を目指す今回のモデルにそぐわない事態となってしまいます。例外的に長期休暇前には、休暇中に必要な残飯の量を計算し多めに与えていました。またミミズはネギやニンニク等の刺激物や高濃度の塩分を好まず、柑橘類や、マヨネーズ等の油分が多い食品を与えると衰弱するため、これらを含む残飯は与えないようにしました。

コンポストは2022年12月中旬に開始し、冬休み、春休み、ゴールデンウイークの長期休暇を経て、2023年7月下旬の夏休み前にミミズを逃がす形で終了しました。この間、水槽内に顔を近づけなければ臭いを感じることはありませんでした。4月頃に、気温が上がった影響かコバエが発生しましたが、アース製薬のコバエ取り「コバエがホイホイ」を水槽内に3つ設置したところ、ほとんど発生しなくなりました。またホコリダニと思われるダニが発生しましたが、直接の害はないので放置しました。

また作成した堆肥の有効性を検証するために、3月中旬から作成した堆肥を使ってほうれん草と小松菜を種から育てる実験を行いました。結果、5月に双方の収穫を行うまで、衰弱する様子もなく、発育する様子が確認されたことから、今回の室内ミミズコンポストで作成された堆肥の有効性が実証されました。そのため、作成した堆肥を小学校でのアサガオやヘチマ等の植物の生育の学習や、園芸用の土に使用するといった活用方法を期待できます。

【注意点】

実施で判明した注意点やノウハウが数点あります。一点目に金属製のスコップで土を混ぜると、ミミズを傷つけてしまうことです。対策として、私たちは竹製の割り箸を用いましたが、鋭利でないプラスチックのスコップでゆっくりと混ぜるなども可能であると考えられます。

二点目に、今回コバエが大量発生した後にコバエ取りを設置したところ非常に効果的であったことから、コンポストを始める時から設置すると良いと考えられます。またもしハエが大量発生し、室内を飛び回るようなことがあれば殺虫剤を使用する事と思いますが、その前に水槽に殺虫剤が入って土壌が汚染されないよう、必ず使用前に布やダンボール等で覆う必要があります。

三点目はミミズの光を嫌う習性や、低気温に伴う活動低下の対策です。分解者の土中での働きを学ぶ為に素材が透明のガラス・プラスチック水槽を利用する場合は、光対策として水槽の上面と窓側を向いている面をダンボールや布などで覆うと良いと考えられます。また冬は保温の為に水槽の土のある部分の周りに布を巻くなどする等の対策が有効でした。

【実現可能性】

今回のコンポストは約100人の規模で行いましたが、規模が約3分の1である学級で運用する場合は容積が5分の2のコトブキ工芸製のクリスタルキューブ300などを使用すればよいと思われます。また水槽の容積を考慮すると、馬糞堆肥一袋とミミズ400g(200g×2より安い)を4-5学級で分けると適当な量になると考えられます。

年間の児童生徒一人当たりの残飯を7.1kgとすると、35人学級では年間248.5kgの残飯が発生します。100gのミミズに夏季休暇を除いて毎日50gの残飯を与えると想定すると、年間約17kg、総量の6.74%の残飯を堆肥化できます。県内の公立小学校の学級数が11875、中学校が4872であり(令和4年度教育便覧)、全学級でミミズコンポストを実施した場合、約280tの残飯の廃棄を削減することが可能です。

また夏季休暇中は数家庭が蓋つきバケツでミミズと一部の土を持ち帰り、室内で飼育することが望ましいです。ミミズの暑さ対策は常に行う必要があり、休暇中に生徒が登校し世話をするより、涼しい室内に置いておく方が手間もかからず、一か月分のエサを事前に与えることによる害虫の発生リスクもありません。

【結論】

以上から、私たちはこの室内ミミズコンポストを、小中学校での学習に組み込むこと、並びに作った堆肥を作物の栽培の学習や園芸等に利用することを提案します。このミミズコンポストは低予算で実施でき、ハエの対策さえすれば臭いなどの問題もありませんでした。定期的に残飯の一部を与え、コンポストを撹拌し、コバエ取りを設置するのみで生態系の働きの一つである生分解を直接観察できることは、特に直感的な学習が重要な小学校での学習に大きく役立つはずです。

県からの回答

貴重な御意見をありがとうございます。

学校における環境保全や食品ロスの指導については、感謝の気持ちや食べ物を大事にする心を育むことなど、「感謝の心」の視点を中心に行っています。また、学校給食は、適切な栄養管理の基、子どもに必要な栄養価が計算され実施されています。

御提案いただいたミミズコンポストは、環境問題について体験的に学習する上で参考になるものであり、研究の成果を学校のホームページで発信したり、近隣の市へ紹介したりすることも考えられます。ただし、ミミズコンポストを小中学校に設置することとした場合、残食を出すことが目的となる可能性があるため、残さず食べようとする意識を下げ、十分に栄養摂取がなされないなど、本来の学校給食の目的が達成されないような事態を招かないよう十分に配慮する必要があります。

今後も、県内の小中学校における環境教育及び食育の推進について、御理解・御支援をよろしくお願いします。

教育庁 義務教育課
教育庁 体育スポーツ健康課

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